2012年5月2日水曜日

謎のダッシュ

妻と二人で地下鉄の通路を歩いていた時の事。

私達の20メートルくらい前方に、杖をついたおじさんがいた。

おじさんは壁に寄りかかり、足を震わせながらしゃがもうとしているような感じだった。

良く見ると、足元に何か紙の様な物が落ちている。

おじさんはそれを拾おうとしているみたいだ。

「手伝ってあげて」
と妻が言い、拾ってあげようと思い、私はおじさんに向かって走った。

おじさんの所までたどり着いた時、紙だと思っていた物が、床に張ってある非常口案内のタイルだとわかった。

何かを拾おうとしていた訳ではないとわかり、私は何事もなかったかのようにおじさんの横を歩いて素通りした。

全てを見ていた妻は私に追い付き、
「まわりにいた人達からは、突然謎のダッシュをした変な人に見えたよ。」
と言った。

ちょっと恥ずかしかった。

おじさんは、実際に何か困っていたのかもしれないが、
「何かお困りですか」
と声をかけるほどの勇気は私にはなかった。

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